研究成果について

くすりを患部までお届けするドラッグデリバリーシステム(2013/1/29発表)

くすりを患部までお届けするドラッグデリバリーシステム

救急隊風邪イラスト2くすり君イラストこんにちは、ぼくは、クスリ君だよ!!
きみ、しんどそうだね?

救急隊風邪イラスト1そうなんだ、最近、急に寒くなったから風邪をひいてしまったみたいなんだ。薬を飲んだら、鼻水がとまってよかったんだけど、なんだか眠くなっちゃって...

くすり君イラストその「眠気」は、薬の副作用だよ。薬には、「期待する作用」と「期待しない作用」の二つの作用があって、期待しない作用のことを『副作用』というんだ。
体内に入った薬は、血流に乗り全身をめぐって患部(病気のある部分)へ届けられるんだ。でも、薬は全身に運ばれるために、患部へ届く薬の量は、1000~10000分の1程度とごくわずかになってしまうんだ。また、患部以外の部分に届けられた薬が健康な組織をこわして、強い副作用を引き起こしてしまうといった問題が深刻なんだよ。こうした問題を解決するための1つとして、ドラッグデリバリーシステム(DDS)があるんだ。

救急隊イラストドラッグデリバリーシステム(DDS)って?

くすり君イラスト『治したい所にピンポイントで薬を届ければ、副作用も減らすことが出来る』。これを可能にすることが期待されている技術が、ドラッグデリバリーシステム(DDS)なんだ。

図1

救急隊イラストドラッグデリバリーシステム(DDS)ってすごいね。
でも、どうやって患部まで届けるの?

くすり君イラスト微量の薬を、毛細血管や細胞の微小な穴を通り抜けることが出来るナノサイズのカプセルに入れて、患部に届けられるまでに吸収されたり、分解されないようにして運ぶんだよ。

図2

救急隊イラスト届けられたカプセルはどうなるの?

くすり君イラスト患部に届いたカプセルは、薬が溶け出すように設計されているんだ。でも、カプセルのサイズが数ナノメートル(nm:ナノは10億分の1m)という普段君たちが目にすることのない極小世界の単位だから電子顕微鏡を使っても内部構造を観察することが出来なくて詳しい仕組みも分からなかったんだ...。
でも、北九州市立大学 櫻井和朗先生の研究グループがSPring-8の強力なX線を使って、カプセルに入った薬が患部に溶け出す仕組みを知ることが出来たんだよ。

救急隊イラストどんなことが分かったの?

くすり君イラストカプセルの内側は溶けにくい膜で薬剤を包み込み、外側は水に溶けやすい構造になっているんだ。だから、カプセルの外側と患部の接触は出来るけど、カプセル内側の薬剤を患部に届けることは、出来ないと思われていたんだ。だけどX線で調べた結果、内側の膜から薬剤がカプセルの中にはみ出していて、カプセルが細胞に届いたときに、カプセルが完全に溶けなくても、はみ出した部分の薬剤が患部にくっついて入り込んでいることが分かったんだよ。

図1

救急隊イラストすごいね!!
薬の溶けだす具体的な仕組みが分かるとどんな薬がつくれるの?

くすり君イラスト患者さん1人1人の体質や病状に合わせて「必要な時に、必要な量を、必要な部位に」届ける薬の設計が可能となるから、その患者さんに確実に効果のある治療をすることが出来るんだよ。
例えば...がんの場合は、今までは副作用が強くて使用できなかった抗がん剤をがん細胞だけに狙いを定めて届け、そこで少しずつ溶けださせるようにすることで、副作用を減らしながらがん細胞だけを死滅させる治療につながるんだ。

 

櫻井先生
北九州市立大学 国際環境工学部
教授 櫻井 和朗

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カテゴリ生命科学・バイオテクノロジーシリーズ投稿日2013年12月 9日 09:17