生命科学・バイオテクノロジーシリーズ
2015年9月28日 10:00
もっちり・ふっくら・・・おいしいパンの秘密
今日は、パン教室の体験にやってきたよ!
パンを食べたときの、口の中に広がる香り、滑らかな舌触り、ふっくらとした食感、おいしいパンを作るには、伸びと弾力のある生地を作り上げることが何よりも大事なのでしっかりこねましょう。
パン作りスタート!パンの材料を混ぜて、こねこね。最初は生地がベタベタ手にくっついていたけれど、段々と生地がまとまってきたよ。
手で生地を薄く伸ばしてもちぎれないか確認して大丈夫だったら、次は生地を発酵させます。
先生、どうして伸びる生地を作ることが大事なの?
生地を発酵させると、よく伸びる生地がイーストの発生する炭酸ガス(気泡)を包み込んで風船のようにふくらんでいくの。気泡はパン生地の発酵とともにさらに大きくふくらむから、生地が伸びないと膨らみの悪い、かたいパンができてしまうのよ。つまりふっくらした軟らかいパンを作るには、できるだけたくさんの気泡を薄い膜で包み込むことが重要なポイントなの。
うわ~生地が2倍のサイズまでふくらんだ~!この生地の中にはたくさんの気泡がギュウギュウに詰まっているんだろうね。うふふ、中をのぞけたらいいのにね。
じつは、「パンの気泡はどのように作られるのか?パン生地の内部の気泡構造はどうなっているのか?」という疑問に、神戸大学の豊田淨彦教授はSPring-8を使って答えようとしているんだって。
へーっ、びっくり!どんな実験なの?
豊田先生は、素材を切ったり加工しなくても、中を輪切りにして内部を細かく見ることができる3次元X線CT装置(BL20B2)で、パン生地内部のCT撮影を行ったのよ。CT装置は病院で体の中を調べて病気の診断をするのにも使われているよね。
それで、生地の中は、一体どうなっていたの?
発酵から焼きあがりまでの、X線CTで撮影したパン生地内部の断面を見てみると、発酵5分~15分後ぐらいは直径0.05mm以下の小さな気泡がたくさん発生していたんだって。その後の15~25分には、発酵がどんどん進んで気泡も増え続けて、気泡の大きさは0.2mm以上まで成長していることが分かったの。でもまだ小さな泡よね。25分以降からは、気泡の発生と成長は減ってきて、そのかわりに気泡同士がくっついて大きな目に見えるような網目構造ができてくることがわかったのよ。気泡の形や壁の厚さなど、とても細かい部分もくっきりはっきりと見ることが出来たの。色々な種類のパンの気泡をCTで観察すると、ふっくらした食パンでは細かい気泡を薄い壁が包んでいて、パリパリしたフランスパンでは大きな気泡を厚い壁が包んでるんだって。食べなくても画像を見ただけで食感が分かるのよ。パンのおいしい食感は気泡の数と大きさに左右されるとがこの実験でよくわかったね。
おいしいパンの秘密を科学で証明できるなんて、すごいね。
今後は、アレルギーを起こさない米の粉を使用したパンで、どうやって小麦のパンのようなふんわりとした、消化しやすいパンを作るかを、気泡の構造を見て研究したりするんだって。
さあ、焼きあがったよ!
「いただきま~す」ふっくらしておいしい~。
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生命科学・バイオテクノロジーシリーズ
2015年9月28日 10:00