研究成果について

貴重なガラスの器 壊さず分析

貴重なガラスの器 壊さず分析

女の子イラスト

美術館に着いたよ!バスイラスト


四角さんイラスト

ようこそ、岡山市立オリエント美術館へ。本日みなさんをご案内する四角です。


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うわぁ~。異国情緒あふれる雰囲気で、めずらしいものがいっぱい!!
このうつわは、丸いもようや小さな突起がかわいいですね。


図1

四角さんイラスト

それは、イラン北部にある墓に副葬されていたガラスのうつわだよ。今から1400年ほど前のものと考えられている。驚いたことに、このうつわは、奈良の正倉院に納められている宝物のひとつ「白瑠璃碗(はくるりのわん)」にそっくり。つまり、正倉院の「白瑠璃碗(はくるりのわん)」は、はるばるペルシャ(現在のイラン周辺)から、ラクダに積まれてシルクロードを通って中国に伝わったんだ。奈良時代の日本へは遣唐使が持ち帰ったと考えられているよ。


地図イラスト

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じゃ、そのふたつは同じ時代に作られたものなの?


四角さんイラスト

ササンガラスは、ササン朝ペルシャ(226~651年)が栄えた、現在のイランやイラクで3~7世紀頃に作られたガラス製品のこと。イラン北部の遺跡から大量に発見されているんだけど、製作工房が見つかっておらず、年代など確かなことはよく分かっていないんだ。
さらに、正倉院が創建されたのは8世紀だから、少なくとも150年以上の年代の開きがある。そこで私たちの研究グループが、「ササンガラスの起源」にせまろうと、SPring-8の高エネルギーX線を使って、非破壊でガラス工芸品の分析を行う方法を世界で初めて開発したんだ。これによって古代の貴重な美術品を壊すことなく成分組成を特定し、作られた年代を推定することが可能となったんだよ。


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世界初!?どんな方法なの?


図2

四角さんイラスト

白瑠璃碗(はくるりのわん)と同じ特徴をもつガラス碗(写真左)とイボイボの装飾をもつガラス碗(写真右)を、安定な台に載せて、SPring-8の高エネルギーX線を当てると、ガラスに含まれるごく微量の元素を検出することができます。1点あたりの測定時間は15分~30分。
この分析データと、層位的に発掘された(年代が分かる)遺跡から発掘された破片を分析したデータを比較しました。すると、レアアースという、ごくわずかしか含まれていない元素の濃度が、ガラス碗の形から想定されていた年代に対応する層位の破片の濃度ととてもよく似ているということが分かりました。つまり、考古学的研究から推定されていた製作年代を化学的に裏付けることができたんだよ。


図3

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日本にはたくさんの国宝級の工芸品、美術品があるから、最先端の技術で、古代から伝わる宝物、文化財の謎の解明につながっていくといいね。


 

本成果は、SPring-8 NEWS 7月号で研究成果・トピックスとして取り上げられる予定です。こちらもぜひご覧ください。

四角氏 岡山市立オリエント美術館
副主査学芸員 四角 隆二

もっと詳しく知りたい方はこちら
プレスリリース本文

カテゴリ考古学・科学鑑定シリーズ投稿日2014年4月14日 09:36