研究成果について

リチウムイオン電池の劣化メカニズムを解明(2012/10/25発表)

リチウムイオン電池の劣化メカニズムを解明

リチウムイオンちゃん1リチウムイオンちゃん:こんにちは、私は「リチウムイオン」です。リチウムイオン電池が充電・放電する時には欠かせない存在なのよ。ボルタ君はリチウムイオン電池のことは知ってる?

リチウムイオン電池画像ボルタ君:もちろん、携帯電話やカメラのバッテリーとして使われているのは知っているよ。でも詳しいことは知らないんだ。

リチウムイオンちゃん2リ:じゃ分かりやすくリチウムイオン電池の仕組みを説明するね。
リチウムイオン電池は、使い捨て電池と違って繰返し充電して使える電池なの。
電極材料として正極にはコバルト酸リチウム、負極には炭素が使われていて、両極の間は電解液に漬かったセパレータと呼ばれる孔のあいた膜で仕切られているの。私(リチウム イオン)が充電の時には、正極から負極へ、放電の時には、負極から正極へ移動することで電気を起こし、電気をためたり使ったりすることが出来るのよ。(図1)

図1

ボ:ありがとう、勉強になったよ。それにしてもリチウムイオンちゃんは、パワフルだね!

リ:体力には自信があるの!でもリチウムイオン電池が長い期間充放電を繰返すと、電池が劣化するみたいで、「あれ?新品の時よりも電池が早く減るようになった...」って経験ない?それが、劣化している証拠で私(リチウムイオン)も移動できにくくなるのよ。

ボ:あるある。なんで劣化するんだろう?

リ:実は、私も わからなかったの。
そこで、京都大学で行われているRISINGプロジェクトの研究成果を調べてみたの。このプロジェクトでは、SPring-8のX線を使って劣化の解明に挑んでいるのよ。
X線を照射して観察すると、電池の正極(コバルト酸リチウム)が電解液に接した時に、電極表面のコバルトが化学反応を起こして、その部分に私(リチウムイオン)を通しにくい極めて薄い膜が出来ることがわかったの。この膜が、私(リチウムイオン)の出入りをふさいでスムーズな移動を妨げて、それが繰り返し充放電の障害となり、電池の劣化につながっているのよ。(図2)

図2

ボ:すごいね、その観察は世界で初めて成功したんだよね?

リ:その通り。今回、劣化の原因が分かったから、今後は、電極表面の加工や電解液の改善によって膜の成長を抑えることで、電池の長寿命化や高性能化を目指すらしいよ。
また、RISINGプロジェクトでは、高速で充電可能な材料の中で起こっている反応のメカニズム解明にも成功しているそうよ。

ボ:みんなが待ち望む高性能な蓄電池の実現に向けて、がんばってくださっているんだね。
うまくいくといいね。

 

革新型蓄電池先端科学基礎研究事業(RISINGプロジェクト)
京都大学

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カテゴリエネルギー・環境シリーズ投稿日2013年8月22日 09:56