生命科学・バイオテクノロジーシリーズ
2013年7月29日 10:06
キノコの不凍タンパク質 不凍機能の解明
キノコ男爵:こんにちは。我が輩は、キノコ男爵(イシカリガマノホタケ)。80年ほど前に、北海道の石狩平野で発見されたのだ。見た目は細くて弱そうだけど氷点下の寒い環境でも、体は凍らないんだ、すごいだろっ‼
近藤先生:キノコ男爵、凍らないのは「不凍タンパク質」のおかげなんだよ‼
「不凍タンパク質」は、氷点下になると食品の細胞のまわりに出来始めた氷の粒子の表面に強くくっつき、氷が大きく成長するのを邪魔し、細胞が凍るのを防いでくれているんだよ。
キノコ男爵:そういうことだったのか!
近藤先生:「不凍タンパク質」は魚や植物・昆虫の体内からも見つかっているんだよ。
魚類の不凍タンパク質は氷の上下の部分にはくっつかない性質をもっているけど、キノコの不凍タンパク質は、氷の全面にくっつくから、魚類の5倍以上の吸着力を発揮して凍るのを防いでることがわかるね。
キノコ男爵:じゃあ、どうしてそんなに凍るのを防ぐ機能が強いんだろう?
近藤先生:そう、私もそのメカニズムを知りたくて、私たちの研究グループで、SPring-8のX線を使って不凍タンパク質(キノコ)の立体構造を調べたんだ。
そうしたら、不凍タンパク質(キノコ)は「らせん階段」のような独特の骨格をもっていて、下の段になるほど膨らんでいて、全体は洋ナシのような形をしていたんだ。そして、不凍タンパク質の外側の一部が平らになっていて、たくさんの溝(みぞ)がありその中にいくつもの水分子が不規則に埋もれていたんだ。この平らなところが氷とくっつくと、溝の水分子がそのまま氷の一部となり、不凍タンパク質と氷を強く結びつける「いかり」のような役割を果たしていることが分かったんだ。
※魚の不凍タンパク質はすでに結晶構造がわかっているものもあるけど、キノコの不凍タンパク質とは全く別の形状をしていたんだ!
キノコ男爵:近い将来、食品の冷凍保存に、こうした我が輩の力が大活躍することまちがいなしじゃな。
近藤先生:今回の研究成果をさらに発展させて、食品のおいしさそのままに、しかも安く冷凍保存する技術を一層進展させたいね。
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生命科学・バイオテクノロジーシリーズ
2013年7月29日 10:06