エネルギー・環境シリーズ
2012年6月29日 09:15
- SPring-8 未来のエネルギーシリーズ -![]() SPring-8でも、より良いエネルギー社会をつくりだすために、色々な分野の科学者や企業の皆さんが、色々な側面から日々実験を進めているんだよ! |
太陽電池編(太陽光発電編)
ねぇ、ねぇ、お兄さん、SPring-8 は、実際に使われているエネルギーには関係ないの?
もちろん関係しているよ。SPring-8は、太陽電池に使われている材料の研究にも使われているよ。
太陽電池は、つまり、[太陽光発電システム]と呼ばれるもので、屋根に設置されているお家も大分増えたよね。
太陽電池!ぼくの家も最近つけたんだ!
少し前までは、とても高価だったんだけど、この頃は、市や街から"設置補助金"が出るから大分つけやすくなったんだって。お父さんが言っていたよ。
そう、太陽の光さえあればどこでも発電が出来る太陽光発電は、一般家庭でも取り入れることが可能だからね。昨今の電力需給問題もあって、市や街が家庭に設置補助金を出したり、設置に協力的な動きが社会的に増えている。だから、太陽電池の生産量は近年急増しているんだよ。
SPring-8で研究されている材料は、太陽電池のどこにあって、何が関係するの?
では、まず、現在(2012年)、一般的な太陽電池の主流となっている『多結晶シリコン型太陽電池(Poly-Si型太陽電池)*1)』をもっと近くで見てみよう。
太陽電池の一番大事な太陽光を取り入れる部分、ここは、太陽電池の名前になっている"Poly-Si(ポリシリコン)*2)"という素材で出来ている。これがSPring-8で研究されている材料だよ。
Poly-Si(ポリシリコン)を細かく見ていくと、色々な大きさのシリコンの結晶がたくさん集まっている構造であることが判るね。
SPring-8の放射光で、この小さな結晶をみているの?
いやいや、SPring-8では、もっと小さいところ、この結晶同士がくっつき合っている"面"や結晶の中の不純物がどうなっているのかを観察するんだ。
太陽光は、Poly-Si(ポリシリコン)に取り入れられて、一つ一つの結晶中でエネルギーをもらった電子となって放出される。これが電極に電気となって伝わるんだ。しかし、結晶中や、結晶同士の境界面に様々な不純物があると、それらが結晶でせっかく生み出された電荷を吸収してしまうんだ。
わかった!不純物が、どんなもので・何が起こっているか、が判れば、もっとたくさんのエネルギーを電気として使うことができるんだね。
SPring-8では、こういったPoly-Si型太陽電池に関する研究が2005年頃から色々とされてきたんだよ*3)。みんなの近くにたくさんの太陽電池が普及している、現在(2012年)よりも少し前だね。
つまり、充分なエネルギーを発生する太陽電池が開発されて、大量生産されて、実際に設置されるようになることに、SPring-8での材料研究の成果が反映されているかもしれないんだね。
太陽電池のように、自然の力で定常的に補充されるエネルギー、"再生可能エネルギー"は昔からあるものだけど、2011年の原子力発電所での大きな事故をきっかけに大きく見直されている。
太陽の光が出ている時しか発電しない太陽電池は、これまであまり注目されていなかったかもしれないけれど、SPring-8で、その材料研究があらかじめされていたことは、改めてとても大きな意味をもってきたとも言えるだろうね。
『あまり使われないから、研究をしない』のではなくて、色々な研究に、未知の可能性があるんだなぁ。
太陽光発電は、太陽光は地球上のどこでも降り注ぐから、砂漠の国に豊かな街を作ることも夢じゃない。
太陽光発電所を中心に電力網を構築した街づくりだって可能だ。実際にこういった概念を提案している企業もある。
新しいエネルギーって、既にあるエネルギーをどう使うか、あるものをどう活かすかということでもあるんだね。ここにも"可能性"だ!
ぼく、『今あるものを見直す』ことをしたり、『これも将来の何かに繋がる!』と思って頑張るようにするよ。
*1) 多結晶シリコン型太陽電池(Poly-Si型太陽電池)
*2) Poly-Si(ポリシリコン) *3) SPring-8での材料研究の傾向 |
エネルギー・環境シリーズ
2012年6月29日 09:15