研究成果について

- SPring-8 未来のエネルギーシリーズ - 太陽電池編(太陽光発電編)

- SPring-8 未来のエネルギーシリーズ -
イラスト1SPring-8を活用して行われている、私達の生活を支える為のエネルギー開発について紹介します!2011年の震災以降、私達の身の回りのエネルギーのあり方について改めて見直す動きがあるね。
SPring-8でも、より良いエネルギー社会をつくりだすために、色々な分野の科学者や企業の皆さんが、色々な側面から日々実験を進めているんだよ!

太陽電池編(太陽光発電編)

イラスト1 ねぇ、ねぇ、お兄さん、SPring-8 は、実際に使われているエネルギーには関係ないの?

イラスト2 もちろん関係しているよ。SPring-8は、太陽電池に使われている材料の研究にも使われているよ。
 太陽電池は、つまり、[太陽光発電システム]と呼ばれるもので、屋根に設置されているお家も大分増えたよね。

 太陽電池!ぼくの家も最近つけたんだ!
 少し前までは、とても高価だったんだけど、この頃は、市や街から"設置補助金"が出るから大分つけやすくなったんだって。お父さんが言っていたよ。

 そう、太陽の光さえあればどこでも発電が出来る太陽光発電は、一般家庭でも取り入れることが可能だからね。昨今の電力需給問題もあって、市や街が家庭に設置補助金を出したり、設置に協力的な動きが社会的に増えている。だから、太陽電池の生産量は近年急増しているんだよ。

 SPring-8で研究されている材料は、太陽電池のどこにあって、何が関係するの?

 では、まず、現在(2012年)、一般的な太陽電池の主流となっている『多結晶シリコン型太陽電池(Poly-Si型太陽電池)*1)』をもっと近くで見てみよう。
 太陽電池の一番大事な太陽光を取り入れる部分、ここは、太陽電池の名前になっている"Poly-Si(ポリシリコン)*2)"という素材で出来ている。これがSPring-8で研究されている材料だよ。
 Poly-Si(ポリシリコン)を細かく見ていくと、色々な大きさのシリコンの結晶がたくさん集まっている構造であることが判るね。

図1

 SPring-8の放射光で、この小さな結晶をみているの?

 いやいや、SPring-8では、もっと小さいところ、この結晶同士がくっつき合っている"面"や結晶の中の不純物がどうなっているのかを観察するんだ。

 太陽光は、Poly-Si(ポリシリコン)に取り入れられて、一つ一つの結晶中でエネルギーをもらった電子となって放出される。これが電極に電気となって伝わるんだ。しかし、結晶中や、結晶同士の境界面に様々な不純物があると、それらが結晶でせっかく生み出された電荷を吸収してしまうんだ。

図2

 わかった!不純物が、どんなもので・何が起こっているか、が判れば、もっとたくさんのエネルギーを電気として使うことができるんだね。

 SPring-8では、こういったPoly-Si型太陽電池に関する研究が2005年頃から色々とされてきたんだよ*3)。みんなの近くにたくさんの太陽電池が普及している、現在(2012年)よりも少し前だね。

 つまり、充分なエネルギーを発生する太陽電池が開発されて、大量生産されて、実際に設置されるようになることに、SPring-8での材料研究の成果が反映されているかもしれないんだね。

 太陽電池のように、自然の力で定常的に補充されるエネルギー、"再生可能エネルギー"は昔からあるものだけど、2011年の原子力発電所での大きな事故をきっかけに大きく見直されている。
 太陽の光が出ている時しか発電しない太陽電池は、これまであまり注目されていなかったかもしれないけれど、SPring-8で、その材料研究があらかじめされていたことは、改めてとても大きな意味をもってきたとも言えるだろうね。

 『あまり使われないから、研究をしない』のではなくて、色々な研究に、未知の可能性があるんだなぁ。

 太陽光発電は、太陽光は地球上のどこでも降り注ぐから、砂漠の国に豊かな街を作ることも夢じゃない。
 太陽光発電所を中心に電力網を構築した街づくりだって可能だ。実際にこういった概念を提案している企業もある。

図3

  新しいエネルギーって、既にあるエネルギーをどう使うか、あるものをどう活かすかということでもあるんだね。ここにも"可能性"だ!
 ぼく、『今あるものを見直す』ことをしたり、『これも将来の何かに繋がる!』と思って頑張るようにするよ。

 

*1) 多結晶シリコン型太陽電池(Poly-Si型太陽電池)
シリコン型太陽電池は、光エネルギーを受けた際に、シリコン中に発生する電荷を電気として取り出す太陽電池で、下記のように分類されます。

シリコン型
太陽電池
結晶型 単結晶シリコン
多結晶シリコン
非結晶型:アモルファスシリコン型太陽電池など
もっとも古くから使われてきた太陽電池[単結晶シリコン電池]は、交換率が高いものの、製造コストは高くなります。一方、多結晶シリコン型太陽電池は、比較的容易に製造ができるため、効率は単結晶シリコン型電池に劣るものの、現在もっとも普及している太陽電池となっています。

*2) Poly-Si(ポリシリコン)
ポリシリコンとは、シリコン結晶がたくさん集まった、多結晶シリコンのことです。
Poly(ポリ)は、"多くの"という意味を示します。Si(シリコン)は、シリコンの原料であるケイ素の元素記号です。多結晶シリコンというよりも"ポリシリコン"という名称の方が一般的になってきいるようです。太陽電池の材料の他に、携帯電話・薄型テレビ・パソコンなどにも使われています。

*3) SPring-8での材料研究の傾向
2012年現在のSPring-8では、ポリシリコン以外の太陽電池材料の研究が活発になっています。実際に太陽電池として利用が始まっている[カルコゲナイド]という物質や、今はまだ利用に至っていない[有機薄膜]などがその例になります。

カテゴリエネルギー・環境シリーズ投稿日2012年6月29日 09:15