研究成果について

- SPring-8 未来のエネルギーシリーズ - 蓄電池開発編(自動車エネルギー開発編)

- SPring-8 未来のエネルギーシリーズ -
イラスト1SPring-8を活用して行われている、私達の生活を支える為のエネルギー開発について紹介します!2011年の震災以降、私達の身の回りのエネルギーのあり方について改めて見直す動きがあるね。
SPring-8でも、より良いエネルギー社会をつくりだすために、色々な分野の科学者や企業の皆さんが、色々な側面から日々実験を進めているんだよ!

蓄電池開発編 (自動車エネルギー開発編)

イラスト2 みんなは今、電気自動車の開発がとても注目されているのを知っているかな?

イラスト3 この間は、日本の会社が電気自動車用のリチウムイオン電池の工場を公開した*1)ニュースを見たよ!
 電気自動車を動かすリチウムイオン電池が、電気自動車の生産のキーになるみたいだね。

 電気自動車は、CO2をあまり出さずに、電気を充電して繰り返し使えるから、環境に優しい、とても理想的で、みんなが欲しい車だよね。けれど、今、動力源にしているリチウムイオン電池は、金より高価な物質を原料にしていたり、構造が複雑で大量生産が難しいから、まだまだとても高いのが現状なんだ。
 ニュースになっていた工場は、現在のリチウムイオン電池を大量に生産することで、少しでも値段を安くすることを狙ったものなんだって。とにかく、ニュースになるくらい、世界中の自動車会社は、みんなが乗れる安くて安全な電気自動車をつくることに一生懸命なんだ。 実は、これに関連した新しい動きがSPring-8でもあるんだよ。

イラスト4 リチウムイオン電池の研究をするの?

 正しくは、リチウムイオン電池の上を行く性能の電池(ポスト・リチウムイオン電池)の開発だよ。
 リチウムイオン電池は、原料が高くて、構造が複雑だから高い。だから、世界中の関係者は、大量生産しなくても、原料が安くて、簡単に作れる電池を作りたいと思っているのだけれど、誰もリチウムイオン電池の仕組みについて詳しく解明できないでいた。これが原因で、リチウムイオン電池以上に良い電池は作ることが出来なかったんだ。

 わかった!それで、SPring-8でリチウムイオン電池の謎を解いて、もっといい蓄電池を開発するんだね!

イラスト5 そのとおり!リチウムイオン電池は構造が複雑な上、密封されている。まして、電池として動いている状態での観察は本当に難しい。そこで、SPring-8の高輝度な放射光を利用することが考えられたんだ。既に、電池の中を観察する研究は進められているんだけど、2012年4月には、専用のビームライン(研究施設)が稼働開始して、加速度的に研究が進められるんだよ。

イラスト6 スゴイね!

 さらにすごいことがあるんだ。 この研究を進めているチームは、"オール・ジャパン"をうたう、大学や企業などの垣根を越えて、日本全体で協力して蓄電池開発をすすめるチームなんだ。 世界経済をけん引する自動車産業に於いて、日本は、常に業界でトップクラスの技術力を誇ってきた。世界中が電気自動車開発で競争する中、日本は、まず蓄電池の謎を協力して解き明かして、国全体の技術力を引き上げ、トップの座を国内で協力して守ろうということなんだよ。 チームを率いる京都大学の小久見先生*2)は、『これまでに開発されてきた中で最も高性能な蓄電池、リチウムイオン電池の仕組みを基礎から明らかにして、更に高性能で新しい電池を開発する。日本企業全体が、世界に先駆けて強くなるのが目的だ。』と話されているよ。*3)

イラスト7 心強いね!
 どこよりも早く、安くて安全な電気自動車に乗ることを可能にしてくれそうだね。

 そうだね。
 "高性能で飛躍的に良い蓄電池"が出来れば、[みんなが買えて、環境に優しくて、安全で長く使える]夢のような車が出来るし、さらに、自動車だけじゃなく、震災のような有事にも使える大きな電力を貯蔵しておくことができる蓄電池だって産まれると思うよ。自動車だけでなく、色々な分野で、世界中で活躍してくれるだろうね。
 新しく出来たビームラインの名前は、『革新型蓄電池先端科学基礎研究ビームライン』*4)。このビームラインから発信される研究成果からは日本人として目が離せないね!

 

*1) 2012年2月16日、三菱自動車工業株式会社系の企業が、車載用リチウムイオン電池の本格量産を開始する為の世界最大級の工場(滋賀県)をマスコミに公開し、ニュースになった。

*2) NEDO 革新型蓄電池先端科学基礎研究事業(RISING事業)プロジェクトリーダー。
RISING事業は、オール・ジャパン体制で、2030年を見通した革新型蓄電池の実現に向け、電池反応メカニズム解明等の基礎研究に立ち返った取り組みを軸に[蓄電技術立国日本]を目指す。
SPring-8を日本の蓄電池産業の成長と優位性を確保するために不可欠な先進評価技術として活用する事業を進めている。

*3) SPring-8研究者インタビュー第6弾参照(SPring-8 Channel)

*4) 革新型蓄電池先端科学基礎研究ビームラインBL28XU(Kyodai RISING BL-28XU)。蓄電池反応における空間・時間スケールにわたる複雑な時系列現象を測定することを目的に、光学系および装置が設計されている。時間分解能と位置分解能を併せ持つ元素選択性X線回折やXAFSスペクトロスコピーを用いての測定が可能になる。2012年4月に供用が開始される。

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研究者インタビュー

カテゴリエネルギー・環境シリーズ投稿日2012年3月12日 10:00